第3回すげの会標本同定会 岡山大会報告

第3回すげの会標本同定会 岡山大会報告

2008年3月29日(土)、30日(日)に第3回すげの会標本同定会が倉敷市立自然史博物館で開催されました。参加者は計26名で、最北は岩手、最南は佐賀県から集まりました。同定会の模様を報告します。

 3月29日(土)、12:30から受付開始。29日は、21名が参加予定でした。そのうち、約半数は岡山理大の学生です。今年の星野研は、8名の新ゼミ生が入りました。もちろん全員参加!スゲについての勉強を兼ねさせていただこうという訳です。
 受付前の準備段階で、岩手の鈴木さんに出会いました。今回の会場である倉敷自然史博物館(以下、倉博)は、岡山の観光名所「白壁の街倉敷」ということもあって、修学旅行生や一般の観光客が多く見かけます。そこで、鈴木さんはさっそくぐるっとひとまわりしてきたとのこと。千葉から参加の千葉さんは「備前焼」をご購入。最高のみやげです。
 13:00となり、まずは開会式。正木が司会進行をつとめ、趣旨説明と日程を説明。次に、倉博の学芸員である狩山さんから博物館の説明と標本庫の紹介。参加者のみなさんに移動をお願いし、博物館の展示と標本庫を見学。展示の目玉は、イネ科とカヤツリグサ科などの目立たない植物を「そのまま乾燥」の巻です。標本にすると立体的な植物が平面になってしまいます。かさばらないのが良いですが、実際に生えているところを想像するには、この展示がとても役立ちます。もちろん、展示は1種1個体であり、色もワラ色でしたが、それぞれの種の特徴がよく分かる展示です。以前、群馬県立自然史博物館学芸員の大森威宏さんのお世話ですげの会をしたときに、群馬県立自然史博物館で厚めのアクリル板の中にアゼスゲが生きたままの形で保存・展示されているのに驚いたことを思い出しました。

倉敷博物館標本庫
倉博の標本庫を拝見

<倉博の標本庫について>
1.カヤツリグサ科植物は他の種よりもゆったりめ。出し入れしやすい
2.扉番号はno.100を目安にする
3.同定した標本は、再登録の必要があるため別にまとめておく
4.標本はなるべく標本庫から出さない
5.生の植物を持ち込まない:防虫・防かび
6.利用者名簿に記名すること
7.利用は随時受付

<倉博全体の説明>倉博ホームページよりhttp://www.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/
開館時間 午前9時~午後5時15分(入館は午後4時45分まで)
休館日 月曜日(祝日または振替休日の時は,その翌日)
年末年始(12月28日~翌年1月4日)
その他,臨時休館日
観覧料:  個人 団体(20人以上) 
一 般 150円 100円 
大学生 50円 30円 
高校生以下 無料   
65歳以上の方,心身障害者とその介護人1名は無料です。 
団体での入館は事前にご連絡ください。特別展開催時の入館料は別に定めます。 

 13:30となり、講習会のスタート。今回の講習会は、3題ありました。
1. スゲ属植物の分類形質:正木智美(岡山理科大学)
2. 岡山県に特徴的なスゲ属植物とその分類:星野卓二(岡山理科大学)
3. アオスゲ類の分類:勝山輝男(神奈川県立生命の星・地球博物館)
 正木の講習は、主に学生が対象です。すげの会会報4号「スゲのかたち(益村 聖)」をテキストとしました。分類形質に関する講習は、何度やって良いような気がしました。今回はなかったのですが、英訳もあると海外の図鑑を見るときに便利かもしれません。星野先生の講習は、岩手県や千葉県、広島県など他県から来られた方々のためのものです。もっとも岡山を特徴づける種だけでなく、今話題の種についても解説がありました。勝山さんの講習は、参加者の千葉さんが「アオスゲ類の標本を持って行きます」と連絡があったことから急遽、お願いしました。いずれも予定時間をオーバーするほどの熱が入った講習となりました。アオスゲ類の話は、何度聞いても新しい気付きがあるように思います。

星野先生
星野先生
勝山さん
勝山さん

 予定時間を30分ほどオーバーした15:30からお待ちかねの標本同定会が始まりました。1日目に同定希望標本を用意されていたのは、鈴木さん、千葉さん、山下先生(岡山大学)、片山さん、溝手さんでした。講習会直後ということで、まずは、千葉さんのアオスゲ類からはじめました。アオスゲ、イトアオスゲ、メアオスゲのみならず、ハガクレスゲなどもありました。勝山さんが言われる区別点を皆必死に聞き取り、質問して確認。それぞれの種に対する認識を再確認している模様。特徴をつかんだ後は、種名当てゲームのようになり、「やった!正解だ。」など声が上がりました。参加者の方々、アオスゲ類に似たノゲヌカスゲ・ヌカスゲの基部の鞘の色と硬さはもう完璧・・のはず。

同定会1
同定会2

 よくよく考えると、勝山さんと星野先生の2ショットは、50年前の秋山茂雄氏と吉川順幹氏がそろっておられるようなもの。両氏とも詳細なスゲ図鑑を発行されています。図鑑に書ききれなかったことも直接聞くことができます。もちろん、お二人のご協力なしには実現しない、ありがたいことです。
 懇親会は、倉敷駅近くの居酒屋で開催されました。宴もたけなわとなった頃、自己紹介をお願いしてみました。自己紹介の中身は、1. お名前、2. どちらから来られたか、3. 好きなスゲは?でした。お願いした瞬間から、3の好きなスゲを考え出す一同。星野先生はヒメカンスゲ、正木はアリマイトスゲとノスゲ、千葉さんはウマスゲなど、まだまだスゲに触れて数ヶ月の星野研ゼミ生も頑張って種名をひねり出していました。中でも勝山さんは「好きなスゲも嫌いなスゲもアオスゲ類!」とのことで一同大笑いしました。

懇親会

 2日目は、この日から参加された斉藤さんの標本と昨日同定できなかったものを中心にひたすら同定。それが終わった頃、狩山さんから倉博の未同定標本の山が届けられました。勝山さんと星野先生がむさぼるように同定していきます。皆はそれぞれの先生のまわりに集まって、どのような同定がなされるのかを注視。たまに、質問も飛び交いました。
 結局、2日間で同定された標本は約600点におよび場所と時間を提供して頂いた倉博と狩山さんに少しは恩返しできたかしらと正木は思いました。
 昼食後、少し立って勝山さんが神奈川へ帰る時間となりました。皆感謝の意味を込めて、拍手でお送りしました。その後は、星野先生を中心として分類の話に花が咲きました。スゲのシーズン直前の良い同定会となりました。

 

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