第4回すげの会標本同定会 神奈川大会報告

第4回すげの会標本同定会 神奈川大会報告

 2008年11月1日(土)~2日(日)、神奈川県立生命の星・地球博物館で第4回すげの会標本同定会が開催されました。参加者は11名と前回より少人数ながら楽しい会となりました。
 今回、新たな試みとして第1日目に講演会をおこないました。といっても、神奈川県立生命の星・地球博物館で定期的に開かれている「サロン・ド・小田原」という講演会がたまたま同定会の時期と重なったという訳です。しかも、勝山さんによるスゲの講演会だったというのが真相です。聞くところによると、同様の講演会が開催されたときの参加者は10名程度だったらしいのですが今回は・・・?

 11月1日(土)、岡山を10時半頃に出発した私。星野先生は残念ながら次の日に大学の入試があり、今回の同定会に参加できず地団駄。気ままな1人旅となりました。1日目の講演会は17:30からなので、ちょっと早めに小田原につけばいいやと思い、16時頃箱根登山鉄道のホームでちょっと一息とベンチに座ったその時、「正木さ~ん!」の声。なんと勝山さんではないですか!?偶然~。勝山さんは午前中から野外観察会の指導をされて博物館に戻っているところでした。さっそく、1秒で電車に乗り込み、星野先生からの伝言をお伝え。内容は、すげの会の役員について、分布図作成について、次回の標本同定会開催地についてなどでした(それぞれの内容については、このあとの記事に掲載されていますのでそちらをご覧下さい)。博物館に到着し、気がついたら「サロン・ド・小田原」の受付係になっている私。すげの会からの参加者と一般参加者とが入り乱れております。先述の通り、前回(「日本のスゲ」出版前らしい)10名程度だったと聞いていたのでうっかり気を緩めていたら、ん?なんか多くない?、おぉ矢野くん久しぶり、すげの会参加者込みでもう30名超えている・・・。

講演会

 講演会後の交流会の参加者も多くなり、準備係さんも奔走。17:30の段階で、講演会参加者はなんと62名となりました。ものすごい「日本のスゲ」効果&中山博子さんの内助の功。中山さんは今回内外の関係者にメールを送って参加を募って下さったそうです。ありがとうございます。いっしょに受付もし、久しぶりに馬場さんともお会いし、楽しいおしゃべりをしました。
 講演会は「スゲ属植物の魅力」と題して、勝山さんがスゲとの出会い、のめり込んだ経緯、現在興味があるグループ、今後の課題を語って下さいました。神奈川県で見られるスゲを中心とした各種解説は、一般の方々には難しいかもしれませんが、私たちすげの会会員にとってはとてもわかりやすくおもしろい講演でした。すげの会会員からの参加者10名(勝山さん抜きで)ではもったいないなあと思ったので、すげの会全国大会でも是非ともお願いしたい講演会でした。
 講演会の後は、交流会(お酒あり)です。すげの会会員は「サロン・ド・小田原」の関係者の皆さんと一緒になって楽しみました。まずは、「サロン・ド・小田原」のまとめ役の皆さんから挨拶があり乾杯。すげの会学生会員の横井さんと話す。横井さんは信州大学の学生さんで、現在「ヒカゲスゲ」の根茎がいかにして発達していくかをテーマにされているとのこと。ちなみに、信州大学にはスゲの標本が6000点もあるそうです!

同定会

 お腹を満たした後は、勝山さんプロデュース「スゲビンゴ」がはじまりました。「スゲビンゴ」は25マスのスゲの写真をチェックし、タテヨコナナメにチェックがそろった人が優勝というスゲが分からない人にはお手上げのゲームです。1人1人スゲの並びは異なり、前のスクリーンに次々とスゲ写真とその種名が出てきます。スゲ写真は「日本のスゲ」からの抜粋という豪華版です。優勝者には、「日本のスゲ」が贈呈されることが少し酔っぱらった勝山さんから発表され会場はヒートアップ。あと残り1コマでビンゴの人は手を挙げなければなりませんが、勝山さんの厳しい確認によりチェックミス判明が続発。後ろから「もうわからないから適当にチェックしてやれ」が聞こえる中、ついにビンゴの人が出て会場は大盛り上がり。

同定会

 交流会終盤には、私が代表として「すげの会」の案内をさせていただきました。会員数315名、学生16名(2008年10月31日現在)というと、「結構多いな」の声。年1回の全国大会やホームページも紹介しましたが、莎草研究とすげの会ニュースの紹介をすっかり忘れました(後悔)。すげの会全国大会でもスゲビンゴを画像なし種名読み上げのみでやろうかな~というと大受けし、ほっと一安心。帰りは同じ宿泊先の鈴木さんと高野さんに「北海道やじきた珍道中」の話を伺い、どっちがやじさん?きたさん?。
 ちなみに宿泊先は、もう定宿「ターミナルホテル小田原 1泊¥5,200~」小田原駅東口から徒歩5分の便利なホテルです。
 第2日目、この日が本番。勢いで9時前に到着すると、あらどなたもおられず・・?時間を確認すると9:30からでした。勝山さんも9時からと思っていたそうで、2人で勘違い。9:30頃、皆さんが駆けつけほっと一安心。参加費をいただき、弁当の注文をとり10:00。勝山さん案内で、標本収蔵庫へ。最近、「標本受付から種別に収蔵」までをシステム化したそうです。受け入れた標本には、まとめて1枚の紙が貼ってあります。項目は5つあり、作業が済んだ項目にチェックが入り、すべてチェックされたら配架されるようになっていました。巨大な標本庫です。やはり、ボランティアさんの協力なしではできないことです。神奈川県立生命の星・地球博物館は、2001年に出版された「神奈川県植物誌」編纂を通してボランティアさんのつながりや結束が強くなったと思われます。すげの会でも、皆さんのご協力の下、私がホソボソと続けている(んですよ!!)「日本のスゲ分布図作成」に向けて駆け抜けていく所存であります。

同定会

 標本同定がはじまりました。分類の難しいものは、標本庫から近縁と思われる標本を持ってきて比較検討することができます。まずは、りんご箱と登場の鈴木さんです。今年採集した北海道のスゲをお持ちでした。昨日聞いた「やじきた珍道中」のときのものと思われます。本州では珍しい種が続発も、サクサク同定の勝山さん。千葉さんが北海道の珍しいスゲとのことで、標本をデジカメで激写!北海道のチャシバスゲは普通のものより大きいから別種の可能性あり?
 次は高野さんの岩手のスゲ「オクタマツリスゲ」が登場。オクタマツリスゲとヒロハノオオタマツリスゲの違いに頭を悩ます。両種はたいへんよく似ていますが、学名を見るとオクタマツリスゲはタマツリスゲの変種(Carex filipes Franch. et Sav. var. kuzakaiensis M. Kikuchi)、ヒロハノオオタマツリスゲは種です(C. arakiana Ohwi*注*タマツリスゲの変種として扱われたこともあります)。再度、標本を見直し、形態の類似性を再確認し、オクタマツリスゲはヒロハノオオタマツリスゲの変種にすべきでは?との結論に達しました。
(まとめ)オクタマツリスゲ:果胞の嘴(短)、雄小穂(色づかない)
 ヒロハノオオタマツリスゲ:果胞の嘴(長)、雄小穂(赤く色づく)
 次に山崎さん、山田さんの関東地方のスゲ。勝山さんこれまたサクサク同定。山崎さんと山田さんから同定のポイントについて質問が飛びます。中山さんからご紹介の德江さんもご自宅の周りで採集されたスゲを中心に持参。参加者の持参した標本がすべて同定され、送付された標本に移ります。そこで出たのが山口の眞崎さんのCyperusです。この種は、もともと私と眞崎さんのメールのやりとりから同定会に送付されるに至ったものです。眞崎さんから送られた「山口県植物研究会会報vol. 3 no. 9」に「ミクリガヤツリ?」の写真があり、私が「イヌクグでは?」と伺ったところ、「イヌクグとは違うようだ」とのお答え。ならば、11月の標本同定会で見てもらおうということになりました。その結果、「ヒメミクリガヤツリ」。聞いたことのない種名でしょう?詳細は次号の「莎草研究no.14」に掲載されますのでお楽しみに~
 最後に勝山さんが気になっているナキリスゲ類「アマミノナキリスゲ」について紹介がありました。「アマミノナキリスゲ」は、他のナキリスゲ類に比べ、果胞は無毛&葉が平滑。最も近いと考えられるのは台湾にも生育するCarex gentilisです。ところが、この果胞が無毛であることは同じですが、葉がざらつくためアマミノナキリスゲと完全には一致しないとのこと。ナキリスゲ類は秋に花を付け、近縁種の数が少ないので分類はできそうですが、アマミノナキリスゲ、オキナワヒメナキリスゲ、ヒメナキリスゲ、コゴメナキリスゲ・・・と唱えるうちに頭が痛くなってきました。
 とここで14:30。持参&送付された標本はすべて同定されました。予定より少し早いですが、散会としました。

<第4回すげの会標本同定会(神奈川大会)>
開催日:2008年11月1日(土)~2日(日)
     1日目:講演「スゲ属植物の魅力」勝山輝男
     2日目:標本同定会
場  所:神奈川県立生命の星・地球博物館
参加者:山崎 厚(東京)、山田隆彦(神奈川)、千葉道徳(千葉)、鈴木弘文(岩手)、
   矢野興一(神奈川)、高野祐晃(岩手)、勝山輝男(神奈川)、正木智美(岡山)、
   横井 力(長野)、德江さん(神奈川)、中山博子(神奈川)。計11名

<おまけ>
「標本受付から種別に収蔵」までをシステム化:神奈川県立生命の星・地球博物館
提出者:
主な採集地:
□入力可
□防虫済(冷凍庫 月 日~)
□DB入力済
□ラベル印刷済
□配架可

 

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