第29回全国大会 北海道釧路大会報告(2018年)

第29回全国大会 北海道釧路大会報告(2018年)

第29回大会
於:釧路市立博物館玄関前にて

1. 大会概要

 2018年6月23日(土)、24日(日)に、すげの会第29回全国大会(釧路大会)を釧路市周辺で開催しました。日本全国から星野会長、勝山副会長をはじめ39名がお集まりくださいました。 

1日目は釧路市立博物館で開催し、午前中は標本同定会、午後は勝山さんによる一般市民向け講演会と研究発表会を行いました。博物館で開催するということで、会員以外の一般市民の方にも参加していただけるようにし、標本同定会には11名、講演会には31名の方が参加されました。一般市民向け講演会では北海道ならではのスゲの面白さを再確認し、会員以外の方にも「スゲ」という植物自体の面白さを知ってもらえたと思います。会員による研究発表では若手会員の発表もあり、大変充実した時間でした。 

2日目の野外観察会は、霧多布湿原センターと阿寒国際ツルセンターの2箇所に行きました。霧多布湿原センターでは、最初にすげの会会員を中心とする特別展『あなたの知らないスゲの世界Part 2』を見学し、たくさんの感想やご助言をいただきました。その後、霧多布湿原のやちぼうず木道を散策し、10種のスゲを確認しました。阿寒国際ツルセンターへ移動する途中、厚岸町の水鳥観察館でトイレ休憩をしながら周辺を観察しました。

阿寒国際ツルセンターでは、最初にビオトープとして整備している場所でカブスゲのヤチボウズを解体して中の構造を観察させてもらい、その後、敷地奥の湿地を中心に採集会を行いました。阿寒国際ツルセンターでは13種のスゲを確認しました。ツルセンターの出発時間が近づいたあたりから雨が降り始め、釧路空港へ移動する間に土砂降りになりましたが、採集の時間帯に降られなかったことはとてもラッキーでした。

釧路空港到着前には、「ヤチボウズ切り鍬」のモチーフが描かれた釧路市山花地区の開拓記念碑をバス車内から見学しました。その後、釧路空港、釧路駅、博物館前の3箇所でそれぞれ解散しました。移動時間が長く、また、見られたスゲの種類もあまり多くなかったため物足りない方もいらっしゃったかと思いますが、自然が豊かなゆえに自由に採集できない場所が多い地域ということで、ご容赦いただけますと幸いです。 

大会開催にあたって、釧路市立博物館の全面的な協力をいただきました。また、浦幌町立博物館の持田さん(大会実行委員)と斜里町立知床博物館の内田さんには当日の受付業務や進行にあたり御助力いただきました。岡山理科大学の正木さんには開催準備の段階からたくさんのご助言をいただきました。霧多布湿原センターの辻さんをはじめとするスタッフの皆様、阿寒国際ツルセンターの河瀬館長、釧路市動物園の吉野さん、松本さんにはエクスカーション開催にあたり大変お世話になりました。ここに厚く御礼申し上げます。 

2. 大会日程 

6月23日(土) 釧路市立博物館 
10:00-12:00  標本同定会 
13:30-15:00  一般市民向け講演会 
 勝山輝男(神奈川県立生命の星・地球博物館):スゲ属植物の魅力と北海道のスゲ 
15:30-17:30  研究発表会 
1. 齋藤佑樹(福島大学共生システム理工学研究科):福島県にもあった谷地坊主~福島県白河市大坂山大池の植物相~ 
2. 矢野梓水・百原 新(千葉大・園)・正木智美(岡山理科大・生物地球)・加藤ゆき恵(釧路市立博物館)・冨士田裕子(北大・FSC・植物園):日本産スゲ属アゼスゲ節の痩果の形態学的分類 
3. 支倉千賀子:釧路周辺のスズダケの北限生育地情報-WANTED- 
4. 織田二郎(近畿スゲの会):シロジュズスゲのその後 
5. 沼宮内信之((一社)日本森林技術協会):森林伐採がオクタマツリスゲの生育に与える影響 
6. 大森威宏(群馬県立自然史博物館)・黒沢高秀(福島大学)・志賀 隆(新潟大学)・薄葉 満(東北植物研究会):尾瀬のカヤツリグサ科フロラ-尾瀬総合学術調査 第1次調査から第4次調査へ  
17:00-17:45  総会 
 平成29年度事業報告 
 平成29年度会計報告 
 平成30年度事業予算案 
 平成30年度事業計画案 
*会計監査等の案件は全て了承されました。 
18:30-21:00  懇親会(釧路センチュリーキャッスルホテル) 

6月24日(日) 
8:30 釧路駅発 
10:30-11:45 観察地1:霧多布湿原センターとその周辺(厚岸郡浜中町四番沢) 
        湿原センターでスゲ展見学・やちぼうず木道周辺散策 
14:00-15:40 観察地2:阿寒国際ツルセンター(釧路市阿寒町上阿寒23線) 
        カブスゲヤチボウズの解体 
15:50 釧路市山花地区開拓記念碑(ヤチボウズ切り鍬モチーフ)をバス車内から見学 
16:10 釧路空港 
16:40 釧路駅 
16:45 釧路市立博物館前 

3. 記録したスゲ類 

観察地1:霧多布湿原センター(やちぼうず木道)
 チャシバスゲ Carex caryophyllea var. microtricha  ツルスゲ Carex pseudocuraica 
 エゾハリスゲ Carex uda  オオカワズスゲ Carex stipata 
 カブスゲ Carex cespitosa  エナシヒゴクサ Carex aphanolepis  
 ヤラメスゲ Carex lyngbyei  ホソバオゼヌマスゲ Carex nemurensis  
 アカンカサスゲ Carex sordida   カワラスゲ Carex incasa 

観察地2:阿寒国際ツルセンター 
 カブスゲ Carex cespitosa  カサスゲ Carex dispalata  
 オオカワズスゲ Carex stipata  サッポロスゲ Carex pilosa  
 エゾハリスゲ Carex uda  エナシヒゴクサ Carex aphanolepis  
 ヒゴクサ Carex japonica  オオカサスゲ Carex rhynchophysa  
 アオスゲ Carex leucochlora  ウスイロスゲ Carex pallida  
 アカンカサスゲ Carex sordida  タニガワスゲ Carex forficula 
 ヒメスゲ? Carex oxyandra

加藤ゆき恵(釧路市立博物館)

 

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