第1回全国大会 栃木大会報告(1990年)

第1回全国大会 栃木大会報告(1990年)

第1回大会
於:今市市砧川にて


 「すげの会」第1回全国大会が1990年5月12~13日に栃木県宇都宮市睦町にある栃木県立博物館で開催された。大会参加者は北は青森県、南は岡山県や愛媛県におよび、地元参加者を含めて総勢40名と盛会であった。

 5月12日(土)研修会・総会・講演会
  12:50~13:30 研修会 「カヤツリグサ属の観察と分類実習」
               講師:後藤稔治(華陽高)
  野口作成によるカヤツリグサ、コゴメガヤツリ、チャガヤツリの乾燥標本を材料に、形態の観察と同定を行なった。

研修会
研修会

   13:40~14:10 総会 議長:野口達也
 本会の世話人の星野卓二氏(岡山理科大・理)から、本会設立から現在に至るまでの経過報告と会計報告、および平成2年度の事業計画と予算案が提案説明された。これをウケ、星野氏から代表就任の挨拶が行なわれた。最後に野口から展示*1の説明が行なわれた。

   14:20~16:30 講演会
   座長:安 昌美(水戸第二高)
 1.カヤツリグサ科植物の内部形態とC3、C4光合成型の分類
   上野 修(農水省・生資研)
 2.細胞学から見たスゲ属植物
   星野卓二(岡山理科大・理)
   座長:路川宗夫(筑波大)
 3.栃木の植生
   長谷川順一(宇都宮中央女子高)
 4.栃木県立博物館における植物標本の収集と保管
   小倉洋志(栃木県立博物館)
 講演会終了後、栃木県立博物館の標本室を見学した。その後、懇親会参加者は、マイクロバスや乗用車で懇親会場(ホテルニューみぞぐち)に移動した。

 18:00-20:00 懇親会 参加者28名
 参加者が全員揃ったところで、開会の挨拶・乾杯をして懇親会に入った。福島県の斎藤慧氏を皮切りに自己紹介もスゲやカヤツリグサ科の話題を交えて始まり、御馳走とお酒と尽きない話題で会場は大いに盛り上がった。栃木の地酒「四季桜」が残り少なくなる頃、愛媛県の石川早雄氏が標本を持ち込んできたので、ほろ酔い気分ながらも同定会になったところもあった。また、懇親会終了後も残った料理を部屋に持ち込み、缶ビール片手に時の過ぎるのも忘れるほどに話に花が咲いた。

懇親会

6月13日(日) 野外観察会
 8:20 集合
 「ホテルニューみぞぐち」に野外参加者29名が集合した。前日の大会のニュースが地方紙の下野新聞に掲載された(本会会報創刊号2頁参照)ので、そのコピーが野外観察参加者に配布された。
 帝国の8:30にマイクロバス、ジープ、自家用車に分乗して、五月晴れの最高の気分の中を今市市の砧川に向けて出発した。
 9:25 砧川着。昼食の場所となる月山休憩所までの約2.5kmを渓流沿いに、クロヒナスゲの群落の中をスゲを求めて歩いた。小さな流れの所にはナルコスゲが、やや湿ったところにはシロイトスゲが生えていた。コイトスゲ、イトアオスゲ、メアオスゲ、ヒカゲスゲやタガネソウがやや乾いた林床に見られた。また、カンスゲ、ミヤマカンスゲ、コカンスゲ、ヒメカンスゲやヒナスゲが緩やかな斜面に生えていた。道路沿いの荒れ地にはまだ若いテキリスゲがあり、茎をさすってヤマテキリスゲ(茎が平滑で葉の裏が白身を帯びる)との認識の実習をしている会員もいた。他に、ゴウソ、ミノボロスゲ、カワラスゲ、ジュズスゲ、ヒメシラスゲなどの若い個体も観察された。終点の月山休憩所ではよく冷えた缶コーヒーとウーロン茶でのどの渇きをいやし、さらに、休憩所付近の観察を続けた。陽の当たる砂礫地にはアブラシバやアオスゲ(早咲きの一種)が見られた。また、急勾配の岩壁にはツクバスゲの群落があったが、果期も終わりに近づいた個体ばかりであった。

ツクバスゲ
ツクバスゲ発見
スナジスゲ
スナジスゲを観察
休憩所
月山休憩所にて


 観察会終了後、田村幸男氏手作りの豚汁と割烹「香蘭」特製の弁当で昼食にした。その味は、新緑と澄んだ空気で格別であった。昼食後、記念撮影。
 12:25 砧川を出発し、今市市小林に向かう。午後のスナジスゲとの対面を期待して、車中は午前にもまして話が弾んだ。塩野室で一時停車して打ち上げ用のビールを購入した。
 12:25 小林の木戸川河川敷内の運動場わきに到着した。車から20m離れた草地にビロードスゲとスナジスゲの群落が接するようにできていた。両種ともやや若かったが、葉の幅、色、小穂の付き方の違い(スナジスゲは葉の幅が3-4mm、とやや狭く、色は緑が濃く、雄小穂と雌小穂が隔離し、果胞が約6mmと大きい)などもたやすく理解できた。また、ちかくにはアオスゲ(遅咲きの一種、鱗片の先端が芒状になり、葉の色も緑が濃く、早咲きの一種に比べると約2週間ほど開花が遅れる)も見られた。これらを十分に観察した後に、川の流れの近くに移動して、小道を上流に向かった。小さな崖になっているところでは、エナシヒゴクサ、ヒゴクサ、アブラシバやコジュズスゲなどが観察された。また、流れの近くではアゼスゲやヤマアゼスゲが群落を作っていた。陽当たりのよい砂地にはアオスゲ(早咲きの一種)が、林下にはコイトスゲやシロイトスゲが生えていた。他に、メアオスゲ、シバスゲ、ショウジョウスゲなども僅かではあるが観察された。
 観察会終了後、今大会の成功を祝し、参加者の今後の活躍を祈念してビールで乾杯をした。
 14:25 小林発。福島、日光方面に向かう方々とここで別れ、車は一路宇都宮へと向かった。車中では本日の生化の話に花が咲いた。
 14:50 「ホテルニューみぞぐち」着。次回の岡山での再会を期して解散した。マイクロバスはJR宇都宮駅まで行き、遠方の方々は帰路に就かれた。研究熱心な方が数名、世話人の野口と標本室と栽培地を訪れ、ヤマクボスゲなど栽培中のスゲを持ち帰られた。

 おわりに
 遠路はるばるおいで下さった会員の皆様のご協力により、今大会を無事終了することができました。ここにお礼を申し上げます。
 会員の安原隆氏にはマイクロバスの運転をしていただきました。田村幸男氏には写真撮影や観察会のサポートなど多大のご支援をいただきました。心から感謝致します。栃木県立博物館をはじめ協力していただいた地元の方々に感謝致します。
 なお、スゲの観察地は次の所ですので、ラベルの整理をお願いします。
1.栃木県今市市佐下部「砧川沿い」 5万分の1地形図日光ー1 標高430-500m
2.栃木県今市市小林「木戸川河川敷右岸」 5万分の1地形図矢坂ー4 標高約230m
(野口達也)

すげの会全国大会(案内・報告)トップへ

コメントは受け付けていません。