第20回全国大会 福島大会報告(2009年)

第20回全国大会 福島大会報告(2009年)

第20回
於 福島県白河市表郷にて

はじめに
 すげの会第20回全国大会は、2009年5月30日(土)、31日(日)に福島県白河市で開催された。宿泊は、表郷金山のホテル&コテージ白河関の里、観察会はビャッコイ自生地、南湖公園、犬神ダム周辺で行われた。日本で唯一、ビャッコイが生育している関の里では、元表郷村村長であった滝田国男さん、表郷環境ネットワーク代表 根本清一さんをはじめとする地元を愛する方々がすげの会会員をもてなしてくださった。皆さんは、「びゃっこいの里」として表郷を盛り立てられており、すげの会会員に豪華な地元の料理をはじめ、和太鼓、ビャッコイが歌の文句に入った阿波踊りを見せていただき、一同大感激であった。
日程
5月30日 (土)
 12:30~13:00   受 付
 13:00~13:30   総 会
1. 表郷で「すげの会」をやっ会 代表挨拶(滝田)
2.会長挨拶(星野)
3.会員異動(正木)
4.平成20年度事業報告(正木)
5.平成20年度会計報告、監査報告(正木)
6.平成21年度事業計画案(正木)
7.平成21年度予算案(正木)
8.その他(星野)
   *会計監査などの案件がすべて了承された。
 13:40~16:30   研究発表会(20分10人)
  1.「ビャッコイ」の発見に至った経緯と現状:根本清一(表郷環境ネットワーク代表)
ビャッコイに関する経緯と、保全活動の歩み、保全の現状と問題点について
  2.オクノカンスゲの観察から(1):野口達也(東洋実業(株)植物研究所)
栃木県産奥鬼怒産オクノカンスゲ(広葉、狭葉)、葉上刺状突起、ハバビロスゲ
  3.南西諸島のオキナワヒメナキリとアマミナキリスゲ
:勝山輝男(神奈川県立生命の星・地球博物館)
アマミナキリスゲ:コゴメより小型、葉平滑、小穂各節1個、果胞2.5-3mm、無毛
  4.キノクニスゲとニシノホンモンジスゲの推定雑種フクイオシマスゲ
:織田二郎(京都大学総合博物館)
福井県雄島、花粉染色、形態学的比較、染色体数と対合、
アロザイムで酵素多型などを比較
 *15:00 休憩:地元で採れた大きなプチトマト、トマトゼリー、コーヒーを楽しむ
  5.尾瀬国立公園のカヤツリグサ科植物相
:大森威宏(群馬県立自然史博物館)、黒沢高秀(福島大学共生システム理工学類)
尾瀬国立公園の植物目録を作り、「尾瀬植物誌」作成が最終目標
  6.福島県白河市南湖の植物相の変遷とカヤツリグサ科相
:黒沢高秀(福島大学共生システム理工学類)
人造湖、調査最近、今回のすげの会観察会で新たな種の発見を望む
  7.日本産スゲ属植物の分子系統と形態の進化:星野卓二(岡山理科大学)
スゲ属全体をざっくり見ると、亜属や節の関係はどのようになっているのか?
  8.日本産スゲ属植物分布図集の作成にむけて:正木智美(岡山理科大学)
分布図作成方法を具体的に。フリーソフトの紹介。これでみんなも分布図ができます。
  9.盛岡市で確認した苞葉のあるニッコウハリスゲ:沼宮内信之(岩手県盛岡市)
まれに見られるニッコウハリスゲの苞葉の紹介。
ユキグニハリスゲでも見られるとのこと。
 10.長野県におけるスゲ属植物のホットスポット:横井 力(信州大学)
多様性、希少性、危険性にスポットを当てて、長野のスゲを見てみると・・
 16:35~16:40 記念写真撮影1
 16:40~18:30 観察会(1)ビャッコイ自生地
ビャッコイが元気に生育、昔は田んぼ用の水路に詰まって大変だったとのこと
 18:30~20:30 夕食及び懇親会、記念写真撮影2
地元の緑川さんによる軽妙な語り口の司会進行(本当は散髪屋さん)
副会長 勝山さんによる「乾杯!」、食べきれないごちそうと和太鼓、阿波踊り
銘酒「びゃっこいの里」味見、今回手伝っていただいた地元の方の自己紹介
次回開催地は未定(かなり西になると星野会長より)
ビャッコイの研究をした平原友紀くんの学位授与を祝って万歳三唱(現在教員)
勝山さんの1本締めで懇親会終了

懇親会

 20:30~ 植物標本同定会・標本交換会、入浴
福留正明さんから、参加者の方にすげの会埼玉大会観察会で見つかったヤマアゼスゲとタヌキランの雑種(?)の標本が配布された。ご自宅で育ちすぎて、奥様に抜くよう言われたとのこと。会費納入受付(正木)
5月31日 (日)
 7:00~ 8:00 朝食(バイキング形式:表郷の納豆あり)・出発準備
 8:30 関の里発(バス方面別送迎)
 9:00~11:30 観察会(2)犬神ダム・南湖公園・十三原の3コースに分かれて
<犬神ダム>星野先生
・E140゚16’53.9″ N37゚01’46.8″ 
ミヤマジュズスゲ、カワラスゲ、ミヤマカンスゲ、シラコスゲ、ヒゴクサ、タニガワスゲ、シロイトスゲ、コジュズスゲ、ホソバヒカゲスゲ、タカネマスクサ、アズマナルコ、オタルスゲ、ミヤマシラスゲ、エナシヒゴクサ、タガネソウ、ゴウソ、ヒカゲスゲ、アオスゲ、メアオスゲ、クサスゲ、ジュズスゲ。
・E140゚16’54.8″ N37゚01’24.4″
ビロードスゲ、ゴウソ、シロイトスゲ、ミヤマシラスゲ、シラコスゲ、アズマナルコ、タニガワスゲ、マスクサ、サナギスゲ、メアオスゲ、タカネマスクサ、カワラスゲ、エナシヒゴクサ、タガネソウ。 
<南湖公園>黒沢・勝山・支倉・鈴木・正木・矢野
・既に知られていた種(再確認)13種
ウキヤガラ、カサスゲ、カワラスゲ、ヒカゲスゲ、メアオスゲ、ゴウソ、ミノボロスゲ、コジュズスゲ、グレーンスゲ、クサスゲ、タガネソウ、アゼスゲ、ホソバヒカゲスゲ。
・分類の取り扱いの変更が判明した種
コイトスゲ(ゴンゲンスゲとしていたもの)
・新たに見つかった種(7種)
マメスゲ(鈴木さん)、アオスゲ、ツルカミカワスゲ、エゾツリスゲ、イトアオスゲ、エナシヒゴクサ、ジュズスゲ(6種:勝山さん)。
黒沢先生から感激の一言:このスゲはこのような環境にあるはずだ・・・と 当たりをつけて本当に探し出すのですから,かないません。でも,エゾツリスゲやツルカミカワスゲなどが残っていたのは大収穫,保全にたずさわっている立場としてもとても嬉しいです。
<十三原>大森威宏さん
・コース概要
 JR東日本乗務員研修センター敷地。台地上は過去国の綿羊試験牧場として利用。台地下の川に沿った草地やアカマツが混交した雑木林。クサヨシやトボシガラまたはミヤコザサが優占する部分が多い。
・出てきたスゲ
マツバスゲ、メアオスゲ、ツルカミカワスゲ、エナシヒゴクサ、オニスゲ、カサスゲ、コジュズスゲ、タガネソウ。
・その他顕著な植物
ヒメコヌカグサ(絶滅危惧種)、ヒナマツヨイグサ(外来植物)。
<ホテル&コテージ白河関の里の近くにある沼周辺>星野先生
・N37゚02’58.9″E140゚17’51.2″
マメスゲ、オニスゲ、ミノボロスゲ、ゴウソ、アゼスゲ。
 12:00~13:00 昼食(バイキング形式)・記念写真配布(2枚)・休憩・解散
おわりに
 福島大会には、佐賀・福岡から北海道まで地元の方も含め総勢82名が参加しました。研究発表の時間が予定より長引いたり、会員がいつのまにか調査に出かけていたりといろいろとわがまま放題させていただきましたが、快く対応して下さり大変感謝しております。カヤツリグサ科植物で地元を盛り上げている日本で唯一の地です。これからもビャッコイをよろしくお願いいたします。(正木)

(担当:滝田国男(表郷で「すげの会」をやっ会代表)、正木智美(岡山理科大学))

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