第24回全国大会 富山大会報告(2013年)

はじめに
すげの会第24回全国大会は、2013年6月8日(土)、9日(日)に富山県高岡市福岡地区で開催され、北は岩手県から南は福岡県まで全国から総数42名の参加者がありました。総会・研究発表会は福岡観光物産館、宿泊・懇親会・標本同定会は「とやま・ふくおか家族旅行村ロッジ山ぼうし」、観察会は高岡市麻生谷(あそうや)、福岡町上向田(かみむくた)、南砺市縄ヶ池(なわがいけ)で実施しました。
日程
6月8日(土)
10:30-13:00 受付(福岡観光物産館)
11:00-12:30 プレ観察会(高岡市麻生谷地内)
13:00-13:30 総会(福岡観光物産館)
1.会長挨拶(星野)
2.来賓祝辞(高田哲高岡市副市長)
3.会員異動(正木)
4.平成24年度事業報告(正木)
5.平成24年度会計報告(正木)
6.平成25年度事業計画案(正木)
7.平成25年度予算案(正木)
8.評議委員選任(正木)
9.その他
*会計監査などの案件がすべて了承されました。
13:30-16:30 研究発表会 (福岡観光物産館)
・アオバスゲ、アオヒエスゲとシロジュズスゲ
織田二郎(京都大学総合博物館)
・韓国と九州および瀬戸内に隔離分布するアキイトスゲの系統地理
星野卓二(岡山理科大学)
・日本産スゲ属植物分布図集の作成 タカネナルコスゲ節からヌカスゲ節
正木智美(岡山理科大学)
・群馬県上野村の石灰岩峰に生育するスゲ属ヒカゲスゲ節とヒエスゲ節植物
大森威宏(群馬県立自然史博物館)
・ツュンベリーの持ち帰った日本産スゲ属植物
勝山輝男(神奈川県立生命の星・地球博物館)
・日本に分布するカヤツリグサ科植物のダウシフォーム根形成と土壌リン濃度との関係
枡田元気(広島大学大学院生物圏科学研究科)
・アオスゲ類とその近縁種の分子系統解析
大西亘(神奈川県立生命の星・地球博物館)
・「ヒメクグの観察」から
野口達也(東洋実業株式会社植物研究部)
16:30~17:30 移動・スゲ田観察会(高岡市福岡町上向田地内)
18:15~20:15 懇親会(ロッジ山ぼうし)
20:15~ 標本同定会
6月9日(日)
7:00~ 朝食・配車・移動
10:00~13:20 観察会(南砺市蓑谷地内縄ヶ池)
13:30 解散
○確認された主なスゲ属植物
・高岡市麻生谷(プレ観察会)(9種)
イトアオスゲ、オクノカンスゲ、カワラスゲ、コジュズスゲ、ジュズスゲ、シラスゲ、ニシノホンモンジスゲ、ノゲヌカスゲ、ヒメシラスゲ。
・高岡市福岡町上向田(スゲ田とその周辺)(3種)
カサスゲ(栽培)、ニシノホンモンジスゲ、ヒメシラスゲ。
・南砺市蓑谷地内縄ヶ池 (16種)
アイズスゲ、アオバスゲ、アズマナルコ、アゼスゲ、イトアオスゲ、オクノカンスゲ、カワラスゲ、ジュズスゲ、タヌキラン、ニシノホンモンジスゲ、ハガクレスゲ、ヒメカンスゲ、ヒメシラスゲ、ホソバカンスゲ、ミヤマカンスゲ(マルミノミヤマカンスゲ)、ミヤマジュズスゲ。
富山県での全国大会は、10年前の第14回(於:宇奈月温泉)以来2回目です。今回会場となった高岡市福岡地区(旧福岡町)は、全国シェア9割の菅笠生産地で、カサスゲの栽培から竹の笠骨作り、スゲの編み上げまでを一貫生産しており「越中福岡の菅笠製作技術」として国の重要無形民俗文化財の指定を受けています。昭和初期の最盛期には福岡駅に出荷専用プラットホームがあったほどの菅笠産業でしたが、現在では栽培も製作も後継者不足が深刻で将来の担い手が切望されているところです。今大会は、そんな背景を背負う高岡市が、生産地の実状を会員の皆様に知っていただき、得られたアドバイスを文化財存続の力にしたいとの思いで招致されたものでした。
初日のスゲ田の観察会では、腰より上まで伸びた一面のカサスゲに目を奪われました。山間の農道に現れた車列と怪しげな面々に、何事かと地元の方が様子を見に来られ、スゲ田の観察会と分かると栽培作業の話をしてくださる一幕もありました。
2日目の観察会場である南砺市の縄ヶ池は、周囲を冷温帯性のブナやミズナラの林に囲まれた標高800m、周囲約2kmの堰き止湖で、湿地部分はミズバショウの群生地として知られています。集合までに予想外に時間がかかったため、2カ所目の観察予定(小矢部市興法寺)を取りやめ、縄ヶ池で充分な時間を過ごしました。周遊ルート沿いでは、多数のクマの糞を巧みによけながら、前掲のスゲ属植物をはじめミズバショウ、ザゼンソウ、バライチゴ、コアジサイ、ユキツバキ、ユキグニミツバツツジ、オオアキギリ、ホクリクネコノメソウなどを観察しました。全体として充実した内容の2日間でした。
大会開催にあたっては、高岡市及び高岡市福岡総合行政センターの皆様の多大なるご協力をいただきました(参加者に記念品として配られたスゲコースターもセンター職員の方々の手づくり!)。また、縄ヶ池では城端ナチュラリスト研究会の方々に、観察会のサポートをしていただき、お昼には山菜汁のサービスもいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。
大会実行委員:太田道人・石須秀知