第4回全国大会 宮城大会報告(1993年)

第4回全国大会 宮城大会報告(1993年)

第4回大会
於:石巻市河北町尾ノ崎走ヶ崎 

 すげの会第4回全国大会が、1993年5月29~30日の2日間にわたって、宮城県石巻市南境の石巻専修大学と河北町長面の松原荘を中心にして開催された。大会参加者は、北は北海道、南は愛媛県や岡山県におよび、総数40名に達し仲々の盛会であった。とくに、野外観察会は第2回および第3回大会が雨に悩まされたのに反し、好天に恵まれ順調に行われた。

5月29日(土) 研修会・野外観察会・総会・懇親会

  13:00~15:00 研修会(研究発表)  石巻専修大学(石巻市南境)
   1.コアゼガヤツリとミズハナビについて
      北川淑子・勝山輝男(神奈川県立博物館)

   2.スゲ属植物の痩果表面構造について
      星野卓二(岡山理科大・理)

   3.片智渓谷(岐阜県)の二次林床におけるスゲ属植物 
      後藤稔治(岐阜県立海津高校)

   4.釧路湿原のカヤツリグサ科植物 
      高橋英樹(北大・農・植物園)

 発表者の後藤・高橋両氏より、13:00までには会場に到着出来ないとの通知があり、急拠発表順を変更して発表者に迷惑をおかけしました。しかし、両氏とも到着は多少遅れたが、発表をとどこおりなく済ますことが出来て何よりであった。
 会場の石巻専修大学の階段教室は、諸設備が一応完備されており、発表は順調に行われ一同熱心に各研究成果を深く、熱心に傾聴した。時間の関係上、質疑の余裕が非常に少なかったのが遺憾であった。

15:00~17:00 野外観察会 - 第1観察地(石巻市沼津沢口)
 研修会終了後、直ちに全員マイクロバスやマイカ-に分乗して、第1観察地の石巻市沼津沢口に向けて出発。10分足らずで現地に到着。
 ここは、北上山地の南端に位置する低山地で、主としてコナラ2次林によって蔽われている。 この林床のスゲを各自、観察・採集することにする。ここの目玉のスゲは、比較的新しく発見されたカミカワスゲとリクチュウツリスゲである。2種とも個体数はかなり多いが、県内での産地は少なく、しかも現在までのところ、北上山地の当地域に限られている。また、全国的にも産地は少ない希少種である。

 約1時間半程、林内を観察して集合時刻の17:00になると、三々五々出発地点に戻って来た。殆どの人が目玉のスゲを採集しているようで何よりうれしい。全員揃ったところで記念撮影をする。
 再び全員、マイクロバスやマイカ-に分乗して一路、宿舎の河北町長面の松原荘を目指す。途中、河北町飯野川にて新北上川に出て、悠々たる流れを眺めながら右岸堤防上をひた走ること約30分程で、河口の松林に囲まれた宿舎の松原荘に到着。

  19:00~19:30 総会
 平成4年度の会計報告と、平成5年度の予算案が提案され、了承された。この際、小山鐵夫先生より5万円の寄付をいただいたとの報告があった。また、平成6年度の第5回全国大会は、徳島県でお世話していただくことに決まった。

  19:30~21:30 懇親会
 総会が終わり、木村哲氏(青森県)の音頭によって乾杯、懇親会に入った。山海の馳走を食べ酒を飲みつつ、自己紹介をして情報交換に花が咲き、時が経つのも忘れて予定の時刻を大幅に超過して熱っぽく語り合った。

5月30日(日) 情報交換・野外観察会
  8:30~9:00 情報交換(同定会等)
 希望者のために、勝山輝男・路川宗夫・野口達也の3氏にお願いして、スゲ標本の同定会を行う。

 9:00 記念撮影   
松原荘の前庭にて全員揃って記念撮影をする。

  9:20~10:20 第2観察地(河北町尾ノ崎走ケ崎)
 マイクロバス運転手の都合により、マイクロバスは10:00発車とのことで、予定を変更、参加者のマイカ-に分乗して、松原荘に程近い河北町東北端の小さな岬・走ケ崎を見学、佐々木豊氏がここの植生やフロ-ラ等について紹介された。

  10:30~11:10 第3観察地(河北町針岡・富士川針岡橋)
 荷物をまとめ、全員マイクロバスやマイカ-に分乗して松原荘を出発。堤防に沿って新北上川を遡ること約10分で現地に到着。この富士川は、針岡橋の少し上流にある大きな富士沼から流れ出てくる川であり、橋近くの堤防内側斜面下部の水面近くに生育しているジョウロウスゲの群落を観察する。
 実は、宿舎で参加者にお土産として配布したジョウロウスゲは、野口達也・田村幸男の両氏が朝早く起きて、ここから採取して来たものである。

  11:20~12:20 第4観察地(河北町小船越・飯野川橋北上川河川敷)
 富士川橋を出発して、新北上川を更に遡り現地に到着。ここは新北上川右岸の河川敷で、堤防の内側には広い草地が見られる。ここのスゲ類を約1時間近く観察する。今年は例年になく気温が低く、スゲ類の生育も一週間程おくれている。みんな、丹念に地面に、はいつくばるようにして目を凝らしながらスゲ類をさがし廻った。しかし、広い草地なので僅か1時間では十分に見ることが出来ないのが残念であった。誰も採集できなかったようであるが、ここの近くにもジョウロウスゲや、レッド・デ-タ・ブック(宮城県)に該当しているスジヌマハリイ等が見られるのである。

  12:30~12:45 昼食
 堤防内側方面に三々五々腰を下ろして、近くの食堂湖月亭からの特製べんとうに舌鼓をうちながら語らい合う。

  12:45 解散
 昼食後、大会の無事終了を祝し、参加者の今後一層の活躍を願い、次回四国での再会を期して、ここの河川敷で解散することにした。河川敷に残った県内会員やマイカ-参加者は、マイクロバスが提防上を見えなくなるまで手を振って別れた。

 〔後記〕解散の挨拶後、マイクロバスに乗りこんだ時に、山下勇氏(静岡県)が突然、観察地の草地をあちこち捜しておられましたので、落し物でもされたのだろうと思い2・3人の方が一緒になって捜しておりましたが、やがてバスに戻って来られたので、落し物が見つかったものとほっとしておりました。が、後日間もなく山下さんより便りがあり、カメラのケ-スを置き忘れたと思って捜しに行ったのであったが、カバンの奥に入れてあったとのことでした。そして、皆様に大変にご迷惑をおかけして申訳ないと恐縮しておりましたが、何はともあれ大切なものが紛失せず出て来て何よりのこととよろこんでおります。私も、屡々山下さん以上のことをやっております。

おわりに
 遠路はるばる多数の会員のご参加をいただき、また好天にも恵まれて今大会を無事に終了することが出来ました。ここに厚くお礼を申しあげます。大会運営に際して、当方の準備・連絡不充分で参加者の皆様に、ご不満と当惑を与えたことが多々あったと反省しております。
 最後に、今大会に際して、色々とご助言をいただいた会代表・星野卓二氏および大会資料の「宮城県産カヤツリグサ科植物目録」を作成された野口達也氏(栃木県)・安嶋隆氏(茨城県)、参加者に配布したお土産のジョウロウスゲを採取された野口達也氏・田村幸男氏(栃木県)、諸印刷をすべて奉仕していただいた東北公害保安株式会社(宮城県名取市・吉江敏雄社長)、研究発表会場を使用させていただいた石巻専修大学に対して心から感謝いたします。
(宮城県会員を代表して 庄子邦光記)

観察会で見られた主なカヤツリグサ科植物

アオスゲ、アズマスゲ、アワボスゲ、イトアオスゲ、カミカワスゲ、カワラスゲ、ゴウソ、コジュズスゲ、シロイトスゲ、ジュズスゲ、セイタカハリイ、リクチュウツリスゲ、タガネソウ、チュウゼンジスゲ、ヒカゲスゲ、ヒメゴウソ、ホソバヒカゲスゲ、ミノボロスゲ、ミヤマシラスゲなど

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