第5回全国大会 徳島大会報告(1994年)

第5回全国大会 徳島大会報告(1994年)

「すげの会」第5回全国大会が、1994年5月21~22日の両日、徳島県麻植郡山川町の町営宿泊施設「こうつの里」(徳島県麻植郡山川町字大内96-1)において開催された。新潟県や鳥取県からの参加者を含め、 18名の参加者であった。少人数であったが、そのためかえって会員相互の親睦が図られ、講演会、意見交換会、標本同定会など有意義な大会となった。

1.5月21日(土)15:00~
(1)講演・研究発表

〈1〉 高越山の植物についての紹介 真鍋佳資
野外観察会の会場となる高越山(1122m)の植物について、真鍋佳資氏からスライドによる紹介があった。ここは、古くから徳島県内外の植物学者や研究家がフィールドワークのために足を運んだ山である。そのため、アワコバイモ、ウスバヒョウタンボクなどがこの地の標本に基づいて命名され、模式産地となっている。また、山頂近くには、オンツツジやコバノミツバツツジ、トサノミツバツツジなどの古木が混成するツツジの大群落があり、国の天然記念物に指定されている。真鍋氏はこの地の徳島県立山川少年自然の家の所長をつとめ、長年この山の自然を見てきた人である。

〈2〉 日本産カヤツリグサ属の検討 -葉身横断面の観察-
野口達也(東洋実業株式会社植物研究部)
 カヤツリグサ属植物の同化組織を、その配列、同化組織に対する細胞間隙の位置による配列型の類型化の試みや Kranz型葉構造の有無についての研究発表であった。ふだん野外観察を中心に研究している者にとってはあまり気がつかないことなので、参加者にとって大変参考になったことと思う。

〈3〉 日本産カヤツリグサ科植物の新産地等の紹介
勝山輝男(神奈川県立博物館)
 タシロスゲ、オキナワジュズスゲ、エゾハリスゲ、センジョウスゲなど沖縄から北海道までの各地の珍しいスゲを美しいスライドを使っての紹介があった。スゲ属植物の研究のために日本各地に足を運んでの研究方法やその成果についての発表、めったに見られない珍しいスゲの数々を見られたことは参加者にとって非常に勉強になり、感動のひとときであった。
 また、スゲ属などは、写真撮影が難しくて、特に小穂などの特徴のある部分を分かりやすく写真で表現するのに工夫がいると思われるが、それが非常に鮮明で、見る者によく分かり、写真撮影の技術でも大変参考になったことと思う。

(2)情報交換会 17:00~ 
 木村晴夫氏(徳島市)からイワカンスゲのさく葉標本が参加者におみやげとして提供された。また木下(鳴門市)からフサスゲとキノクニスゲの生品も希望者に配られた。そして、各県から持ち寄られた標本の同定が行われた。その後、徳島県のスゲ属植物の標本(木下が徳島県内で報告されているものの大部分の種類について準備)の紹介と同定会をもち熱心に研修した。

(3)総会 19:00~
 平成5年度の会計報告ならびに平成6年度予算案が審議され了承された。また、今年度の反省と来年度の行事計画について話し合われたが、詳しいことについては割愛する。

2.5月22日(日)野外研修(於 高越山 船窪)
地図 5万分の1「脇町」徳島県麻植郡山川町奥野井
 天候に恵まれ、自家用車等に分乗して野外研修会場である高越山の船窪に向かった。ちょうどツツジが満開で「ツツジ祭り」のイベントと重なり、車が多いことが我々にとっては有り難くないことであった。しかし、国指定の天然記念物だけあって、一面に花を咲かせたツツジの群落は見事であった。花を眺め、スゲを観察しながら、再び車に分乗して美郷村にある母衣暮露滝(ぼろぼろの滝)へ行き、イワカンスゲやチャイトスゲなどを採集した。昼食後阿波山川駅まで下り解散した。

3.おわりに
 本会を開催するにあたり、会場をどこにするかということで、徳島県の会員が大変悩んだところである。他の植物関係の大会も重なっていたことや準備期間も少なかったこともあったが、何よりも苦慮したことは、スゲの種類が豊富で採集できるという好都合な場所が思い浮かばないことであった。議論の末、宿泊施設があり、移動にも便利である等も考慮し、国指定天然記念物のツツジも見ていただけるということで、最終的に高越山での開催に決定した。全国から参加していただいた会員の方々には、スゲの採集という点では満足していただけなかったのではないかと、申し訳なく思っている。しかし、本大会を通じて、会員の方々から、カヤツリグサ科やスゲ属植物について、多くのことを教えていただいたこと、会員相互の親睦が図られ、有意義な大会になったことは、徳島県の会員にとっては誠に有り難いことであった。ここに、事務局の星野卓二氏はじめ関係者各位ならびに貴重な講演・研究発表で大会を盛りあげていただいた野口達也氏、勝山輝男氏、そして、遠路はるばると参加していただいた会員の皆様方に厚くお礼を申しあげるとともに、ご健勝と今後の益々のご活躍を祈念するしだいである。また、本県の真鍋佳資氏には会場の設営をはじめ、高越山の植物についての紹介、現地での案内等準備万端大変お世話になったことを付記し、謝辞にかえさせていただきます。
(文責 木下 覺)

観察会で見られた主なカヤツリグサ科植物

イトスゲ、イワカンスゲ、ケスゲ、タマツリスゲ、ヒゲスゲ、ヒメカンスゲ、ヒナスゲ、フサスゲなど

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